蔵

6.尾暮露車

――"And lose myself along these dusty roads."
(『Innocence』(『Road Salt One』 Pain of Salvation、2010))


 執務室に障子越しの夕日が差す。
 その日、司令官はほとんど執務室にいなかった。
 しかしながら、今日は艦娘を海域へ出撃させたわけではなく、その意味での仕事はしていない。
 司令官に課せられた任務は、実はもっと特殊なものなのである。
「ただいま戻りました、っと。」
「お帰りなさい、なのです。」
 このやり取りも今日だけで何度目か。
「四回目なのです。」
「……疲れているな。」
 司令官は思ったことを無意識のうちに呟いていたようだ。
 その癖から司令官の状態を察して笑顔を向ける電に癒されながら、司令官は炬燵へ向かった。
「それと、留守中にお電話はなかったのです。」
「じゃあ、四回分の履歴をきちんと付けないとな。」
 漸く一段落できると考えた司令官は炬燵の上のタブレットを立ち上げる。
「今年に入ってから、初めてかもしれないですね。」
「……ああ、そうだな。そういえば最近は何もなかったからなぁ。」
「司令官さんがこんなに働いているのを見るのは、久しぶりなのです!」
「あのなぁ……。」
 ブラウザを起動し、サーバに接続しながら二人は近況を振り返った。
 今年に入ってからは穏やかな日が続いていたのは事実である。
 そのため、司令官はほぼ執務室に入り浸って新しい実験を繰り返していた。
 しかし、今日は違った。

「本日一つ目はまず朝一番、アラームが煩いとのこと。」
 司令官が執務室でタブレットに向かおうとしていたとき、執務室備え付けの電話が鳴り響いた。
 同じ奥槻基地に所属する提督からの内線であった。
「現場に到着すると業務用のパソコンが起動せずに提督は狼狽。落ち着かせて状況を聴取すると同時に、アラームが鳴っていないことに気付く。」
 提督から話を聞きながらパソコン周りの環境を確認。
 パソコンは確かに反応がなく、起動ランプすら点灯しない状態。
 電源が怪しいと考え、電源コードを辿る。
 その先には、僅か二行しか表示できない前面コンソールに"バッテリーモード"と表示している無停電電源装置の姿があった。
 照明や他の電気製品が動作しているため、停電ではないことは明らか。
 今度は無停電電源装置のコードを辿る。
 ……その先には、書類棚の裏側で、落下した書類の勢いで無残にも引き抜かれたコードの姿があった。
「原因、書類の落下によるコードの抜け落ち。これに伴い無停電電源装置よりアラーム発生。また、時間経過に伴い自動シャットダウンが実行。バッテリモード移行に伴いパソコンが反応しなくなる。コードを挿し直し、電源復旧とパソコンの起動を確認。」
「……うっかりさんなのです。」
「まったくだ。ただ、もう一つ落とし穴があった。」
 備考:パソコンの電源コードがサージグループに挿さっていたためマスターグループに挿し直す。
 これに伴い、先方提督に電源コードの挿し替えを行わないように強く勧告した。
「さーじ?ますたー?」
「最近の無停電電源装置はコンセントの挿し口に複数の役割を割り当てることができるんだ。」
 サージグループというのは、雷のような急激な電圧変化から機械を保護する機能しか持たない挿し口である。
 つまり、おそらく多くの人間が期待するであろう停電時の電源供給は行われない。
 これでは普通に壁のコンセントから電気を供給されていて、停電に陥ってブツン、と変わらないのだ。
 バッテリからの電源供給を望むなら、隣のマスターグループという挿し口に挿さなければならない。
「だからパソコンを起動したら、"前回正常にシャットダウンが行われませんでした"と怒られた。一歩間違えれば中身がお釈迦になっていたかもな。」
「はわわわわ……。」
「一応ログや一通りの動作はチェックしたから大丈夫だとは思うが……こういうのは心臓に悪いな。」
 機能が拡張されて便利になるのは結構なことだが、新機能に付いていけずに今回のような事態を招くことが多いのも、悲しき現状である。
 しかも、こうした機能がないもっとシンプルな機種は旧式で入手困難、この機能と付き合うことが万人に強要されるのである。
 先方の提督は残念ながらこの分野に蒙い。
 細やかに説明して理解を得ることは難しく、仮に得られたとしてもおそらく暫くしたら忘れるだろう。
 そこで、司令官は一切の説明を諦め、原因と無事に復旧したこと、そして少しの勧告に留めたのである。

 連絡された経緯と症状、確認したこと、原因、そして対処。
 これらを項目を整理してまとめ、記録として残す。
 こうして対応したトラブルの記録を残せば、次回は記録から迅速な対応が可能になる。
 しかも、司令官が不在であっても記録を見た艦娘がある程度は対応することもできる。
 サーバに蓄積されたデータはいわばノウハウの見える化であり、現場の経験という実践的で極めて貴重な知的財産だ。
 このナレッジマネジメントこそ、公言できる中では司令官の一番の財産であろう。

「二つ目は……執務室のゲートウェイの故障。起動すらしないため代替え機器を設置、ですか。」
「分解したらコンデンサが膨らんでいたから、あれはもうダメだな。残念ながら私にはんだの技術はない。部品もない。」
 三つ目、本部の共有フォルダへのアクセスができない。
 そもそも、本部へのVPN接続ができていなかった。
 パソコン側のネットワーク設定が、ルータに設定された方式と一致していなかったためだ。
 パソコン側の設定を修正し、アクセスできるようになったことを確認。以上。
「四つ目、インターネットに接続できないとのこと。先方の手により復旧。対応せず。」
「原因は何だったのです?」
「……先方提督所属の駆逐艦がハブの電源コードに足を引っ掛けて抜けただけ。」
「……電話する前に確認してほしいのです。」
「全くもって同感だ。どんなに知識がなくても、せめて周辺機器の電源が入ってるかどうかの確認くらいはしてほしい。」
 一通りの対応記録を記入し、司令官は大きく溜息を吐いた。
「まあ、どの機械がどういう役割をしているかさえ把握していない人には難しい話だが。」
「なのです……。」
 それにしても、この基地の情報リテラシーはせめてもう少し高くなってもらいたいものである。
 司令官は、心の底からそれを願った。真剣に。
「せめて周辺機器の電源確認ができるようになるだけでも、三割くらいは仕事が楽になると思う。」
「そんなに、ですか?」
「……どこを触ったら良いか分からないから兎に角来て見てくれ、がなくなれば離席の頻度を下げられるだろう?」
 とはいえ、全くのゼロになってしまうと私の仕事がなくなってしまうが、と司令官は苦笑した。
 そう、この司令官に課せられた任務……それは、コンピュータやネットワークの運用・監視である。
 基地の作戦行動を行うに当たって用いられるネットワークインフラの運用整備は、もはや専門の人間がいなければ成り立たないほど複雑なものになっていた。
 それはどこの鎮守府や基地でも同じである。
 その中において、この奥槻基地に派遣された人間……それが、この司令官なのである。
「本来は不要な現場作業がなくなれば、その分のリソースが有効活用でき、作業効率も上がるはずだ。理論上は。」
「理論上は?」
 話にまだ続きがあることを仄めかす言い回しに、電は戸惑った。
 言っていることに矛盾はなさそうなところが余計に引っかかる。

「人間というのは兎に角怠ける生き物だからな。時間があると判断すると何もせずだらけるものだ。」
「そんなことは、ないと思うのです……。」
「電は真面目は偉いな、私も見習わないと。」
「そうでもないのです。」
 そう言いながら電を撫でる。
「残念だけど、私は懶惰なんだよ。」
 言いながら、悲しきは人間の性質かな、とわざとらしく両手を広げる。
「暇と退屈は人間を堕落させる。しかも居心地が良いものだから抜け出そうとしなくなる。平穏安寧に胡坐をかいて慣れると心の機微も麻痺してくる。ちょっとやそっとのことには無関心になる。」
 無論、適宜な休息は必要だけどね、と司令官は付け足す。
「じゃあ、忙しければ良いのです?」
 電は安直に聞き返してみた。
 自称怠け者の司令官が何と答えるのか、知りたいと考えたからである。
「……ところがそうでもないんだな。」
 司令官は炬燵の上に肘をつき、手を組んで口元を隠した。
 その真剣な眼差しも相俟って、トラック泊地で連合艦隊を指揮し、敵艦隊を迎撃したときのような貫禄を醸し出す。

「試しに忙しいという文字を思い浮かべてみよう。」
「はい。」
「左はりっしんべん、つまり心だ。右は亡霊の亡。この形は"心を亡くす"といえる。」
 電は先日のトラック泊地迎撃における絶え間ない出撃を思い出す。
 司令官は疲労の蓄積具合を見計らって適宜艦の交代や補給艦の動員を行ってはいたが、それでもここ最近では指折数えるうちに入るほどの状況であった。
「忙しいときは目の前のことで精一杯になり、周りが見えなくなる。電も出撃準備の際に何度も他の艦と衝突しそうになっただろう?」
「はい、なのです……。」
 司令官は先日の状況の中でも、理解しやすいシチュエーションを選び出して例を挙げる。
 それに電も納得する。
「心の余裕を亡くした状態は、精神的な許容量をすり減らす。気配りや優しさを失わせることに繋がる。さらにこれが積み重なると精神的に不安定になり、些細なことでも苛立つようになる。それも全ては、自分のことで精一杯になり、他人や他のことを考える余裕がなくなるからだ。」
 だから、過度な忙しさもいけない、と司令官は続ける。
 電は先の迎撃作戦中のみんなの様子を思い出し、頷いた。
「中には常に自分を追い立てて忙しい状況を作り出す人も見たことはあるけど、私は正直そうはなりたくないな。本人はそんなつもりはなくても、いつも何かに苛立っているような感じに見える。」
 司令官は今年の新年会の様子を思い出した。
 酒の勢いに任せて不平不満を撒き散らす宴会の席ほどうんざりするものはない。
 しかも、規模は異なるものの、内容自体は酔っていなくても口にしていることと同じである。
 さらに言えば、そうした酒の席では常に同じような話が上がるのである。
 本人には申し訳ないが、話す内容がそれしかないのか、と考えると正直人間が浅いと感じてしまう。
 話の内容も、本人の精神状況も、全く進歩がないのである。
「例えるならば、ランニングマシンの上で全力疾走してる感じか。」
「大変そうなのです。」
 一瞬「沈みません!」という声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
 彼女は確かに車輪の中で走っていそうな雰囲気はあるが。
「余裕を失った心は探求心を失う。向上心があったとしても、長期的に見たら自ら成長の芽を摘んでいる可能性すらある。ただ無心に食べて寝てただ目の前の事案を片付けるだけの存在……肉体的には生きているが、精神的には活きていまい。私は、そんな無機質な車輪にはなりたくないね。」
 司令官は、自分に言い聞かせるように語尾を強調して言った。
「車輪、なのです?」
「ああ、忙殺という名前の車輪だ。心を挽き砕きすり減らす歯車と言っても良いだろう。」
 電は、自分が歯車の間に挟まれていく姿を想像して青くなった。
「一番良いのは、二・三割程度の労力しか割かなくて済むような適度な仕事量だな。忙しくはなく、かといって暇でもない。外的刺激も程々にあるから、好奇心が反応しやすいし、新しい物事への関心を払う余裕もある。」
 何事も程々が良いということだ、と司令官は一人で納得する。
 話を聞いた電もそれは同感であった。
 後処理も一通り終わり、待望の穏やかな時間が始まろうとしていた。
 しかし。

 コツ、コツ、とリノリウムを突くヒールの音が大きくなっていた。
 その音は、執務室の前で止まった。
「牛若提督秘書艦、陸奥です。古峯提督はご在室でしょうか?」
「……はい、どうぞ入ってください。」
 とうに日は暮れている。
 この時間に他の提督所属の艦娘が執務室を訪ねてくる理由は、緊急の場合である。
 それを察した司令官は、陸奥を中へ通した。
「昼はお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、良いのですよ。そちらの満潮の性格からすると珍しい気もしますが。」
「我が提督の艦隊では、まだトラック泊地の作戦が完了していないんです。」
「ああ、なるほど。」
 司令官は迎撃作戦までしか参加していないが、中には逆に進撃を試みる提督もいた。
 牛若提督はその中の一人ということであろう。
 彼の所属の艦隊は、未だに多忙の中にあるということだ。
「それで、未だに作戦遂行中の艦隊の秘書艦が私を訪ねてくるということは、緊急の用件なのでしょう?」
「お話が早くて助かります。実は――」


「お話は分かりました。早速、確認することにします。ご報告感謝します。」
「いえ、これも秘書艦の務めですので。」
 失礼します、と一礼して陸奥は再びリノリウムを蹴って去って行った。

「……やれやれ、柵多きは"憂し"車ですか。」
「……司令官さん、またお仕事なのです?」
「どうやら、そのようだ。」
 司令官は肩を落とした。
 陸奥曰く、基地内の共有フォルダの一つがやたら開くまでに時間がかかるということであった。
 それが丁度トラック泊地の進撃作戦関連の書類が入ったフォルダであったため、作戦指揮に支障が生じる恐れがあるとして、早急の対応を依頼してきたのである。
「"牛"若提督が陸奥に救援したが対応できず……なるほど、これが'未知の苦'ですか。」
 私は鞍馬ではないのですけどねぇ、と続ける。
「?」
 司令官は一人笑い納得したが、電には何のことか分からなかった。
「さっき話しただろう?駆逐艦がハブの電源コードを抜いてしまったと。」
「ああ!」
 電は四つ目の事案を思い出し、ポンと手を叩いた。
「'満'潮による'苦'労を'陸奥'が抱え込んだ、ということさ。」
 本当は今の陸奥の依頼を指して言ったのだが、四つ目の事案でも通じるところが妙である。
 こんな上手い偶然もあるものだ。         、、
「ついでにいえば、この事案の主役であるハブはかなり古式だった。」
「輻が集まるのです?」
「そういうことだ。」
「……車輪、なのですね。」
「ああ、そうだな。」
 電は司令官の意図を汲み取って正鵠を射た会話をこなしている。
 それは、今では司令官の高度な洒落を理解できるまでになっていることの証左でもある。
 もちろん、最初は電にコンピュータの知識などなかったが。
「ついでにいえば、挿し口は六個だった。」
「陸奥さんっぽいのです。」
「まったくだ。……さて、電も来てくれるか?」
「了解なのです!」
 電と会話をしながら、司令官は報告のあった症状の確認を終えた。
 同時に、共有フォルダが存在するストレージの管理画面を開き、状態の確認も行っていた。
 そして、二人は執務室を後にし、リノリウムを歩き始めた。
「……この基地の廊下は全ての傷を抱え込むことはできやしない、か。」
「?」
「いや、なんでもない。」


 リノリウムを汚し、二人が辿り着いたのは地鳴りのような呻きが渦巻く一室だった。

――サーバールーム。
 この基地で使われているサーバやネットワークが集約された一室である。
「トラブルというのも時には絶え間なくやってくるものだ。」
「車輪のように。」
「そう。」
 二人は会話を続けながらあるラックを開ける。
「jzdisk……このNASだな。」
「ランプが赤いのです。」
「ああ、間違いない。」
 二人の視線の先には、四本挿しのハードディスクをRAID5で構築したストレージサーバの筐体があった。
 ストレージサーバはファイルの保存や共有に用いられる記憶装置である。
 (特に、ネットワーク内で共有されるものはNAS(Network Attached Storage)と呼ばれる。)
 ゆえに、司令官は大地の如く無限の慈悲を包容する地蔵菩薩からjzdiskと名付けたのである。
 司令官が今開いたラックの扉が観音開きの方式になっているもまた偶然だろうか。
「トラブル多き憂し車は輪廻の如し。六道輪廻の全ての境遇を守護する菩薩様がトラブルを抱え込むとは……。」
 司令官は自嘲するかのような笑みを浮かべた。
 我ながら皮肉の効いたネーミングと応報である。
「しかも三番目のディスクが故障ですか。」
 司令官は四本のディスクの中で、一つだけ違う色で点灯するディスクを見る。
「……報告してきた人が人だけに笑えないな。」
「なのです……。」
 二人は思わず感嘆の息を漏らした。呆れ半分の感嘆である。

「こいつの型番は……これか。電。」
「持ってくるのです。」
「ああ、頼む。」
 この手のNASは電源投入したままでもハードディスクの交換が行えるのが強みである。
 司令官はハードディスクの型番をメモし、そのメモに従って電が予備のディスクを探す。
 この作業も、もはや慣れたものである。
 電が向かったのは、別室のハンドル式ラック。
 棚の側面についたハンドルを回すことで棚が移動し、その隙間が通路となる。
 狭いスペースで大量の物資を格納するための手法の一つである。
 しかし、ハンドルをただ回すだけではもったいないので、司令官はハンドルの付いている円盤に六字大明呪を書いた。
 回しただけで功徳が得られるから有り難いだろう、という算段である。

「はい司令官さん、持ってきたのです。」
「ありがとう、電。」
 電はお目当てのディスクを発見し、司令官はそれを受け取って故障したディスクと入れ替える。
 挿入して即座にビープ音が鳴り、全てのディスクが同じタイミングで点滅するようになる。
「……よし、RAIDのリビルドが始まったな。これが終わるまで早くても数時間はかかるだろう。今日はここまでにして、明日結果を確認しよう。」
「はいなのです。」
 これで五個目の事案を片付けた。
 既に夜は更け始めている。
 遅くなってしまった夕飯をどうするか考え始めたとき、電が声を上げた。
              、、
「今夜は司令官さんの好きな、ナスの南蛮漬けにするのです。」
「ナスか。よし、そのアイディアに乗ろう。」
「ナスは好きなのです。」
 電も言うようになったものだ。
 しかも好物であれば何の文句も言うまい。
 司令官は喜び、サーバールームを後にしようとした。

「……司令官さん、お手紙が届いたのです。」
 そこに、電のスマホにメールが届く。
「不正検知か。」
「はい。」
 見れば、インテリジェントハブにまた未登録の機器が接続されたというメールだった。
 六個目の事案。今日はつくづく六という数字とハブに縁があるようだ。
 見たところ、以前に検知したMACアドレスと同じ機器のようだ。
 誰かが勧告を無視して未登録のまま使用しているらしい。
「……今度は強めの勧告をしておかないとな。」
 あいにく、サーバールームには端末はない。
 執務室に戻り確認を行っても、現行犯の現場を押さえることはできないだろう。
 司令官は諦めて、もう一度勧告を行うことにした。
 それよりも、今は電のナスの南蛮漬けの方が楽しみというのもあるが。


 なお、司令官がこの日の仕事の達成感に満たされて眠りに就いた後。
「テートクゥ、コッチ見るネェー……!」
 という入渠中のはずの艦娘の呻き声にうなされて睡眠不足に陥ったのは別の話である。
             、、
 後に司令官はこれを、夜の御休中に出る生霊とは趣深いものですね、と虚ろな目で語ったという。