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雑考メモ ― 祝神(いわいじん)について ―

 祝神(いわいじん)
それは一般には屋敷神、或いは同族神の別名とされる神格であるという。
 この屋敷神とは、屋敷地の一角或いはその周囲で
祀る神のこととされる。
 一方の"同族神"は、ある一族が共同で祀る神をいうらしい。
 その一族とは、"同族"と呼ばれる、
ある一族の本家・分家の一団のことである。
(なお、地方によっては"同族"と類似する意味の言葉として
合地(アイジ)地類(ジルイ)、マキなどがあるという。)

 この祝神という語について、"イワイ"は
「祝」と記すことが多いが、むしろ「斎きまつる」
という意味であったのではないかと
『日本民俗大辞典 上』や『民俗の事典』には記されている。
 また、『日本民俗大辞典 上』(祝殿(いわいでん)の項)はこの上で
祝神と祝殿は同根であり、神を祀る場所が祝殿、
そこで祀られる神が祝神だったと考えられる、と述べている。

 ところで、その呼称は長野県の中信から南信に
集中しているといい、諏訪地方から隣接する山梨県北西部に
かけても広く分布するという。

 その祭祀形態については、
屋敷神の場合は裏庭の隅に石や木の祠を設けて祀り、
同族神の場合は集落に近い山中や集落内の森に祀って
一族の守り神として祀るような形式が一般的のようである。
 なお、山間部では同族神、平坦部では屋敷神として
祀られる傾向が強いという。
 また、そこに祀られる神はまちまちで、
稲荷様や天神の他、春日、津島や熊野、八幡、愛宕など、
二十種にも及ぶといわれている。
 しかしその一方で、
祝神とだけ呼ぶような場合もあるようである。

 祭りは年に一度、春に行われる例が多いが、
春秋の二回行う例も見られる。
 その期日は二月、四月、十一月など、
一般に氏神を祭る時期と重なることや、
同族の間で祀られることから祝神(祝殿)と氏神の
関係、習合を指摘する声もあるようである。
 また、同族祭祀の顕著な例としても注目されているらしい。
 そこでこの祝神(祝殿)について調査した例はというと、
昭和十九(一九四四)年に和歌森 太郎氏、堀 一郎氏らが
東筑摩郡教育会の協力を得て、郡内にある祝殿の
悉皆調査を行った例があり、これが祝神(祝殿)について
初めての本格的な調査であったようだ。

― 参考文献 ―

  • 『日本民俗大辞典 上』 福田 アジオら編集 株式会社吉川弘文館 1999
  • 『民俗の事典』 大間知篤三ら編集 岩崎美術社 1972
  • 『日本を知る事典』 大島 建彦・大森 志郎ら編集 株式会社社会思想社 S.46