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雑考メモ  ― 伊豆能売神(いづのめのかみ)について ―

 伊邪那岐命が橘之小門で禊を行った際に化生した神々のうちの一柱。
 直前には八十禍津日神、大禍津日神に続いて
神直毘神、大直毘神が化生している(『古事記』)。
 八十禍津日神、大禍津日神は黄泉国の穢れから生まれた、
八十禍津日神の名の八十は多いこと、禍は曲と同様に良くないこと、日は霊を表すとされ、
世の中に凶事、災厄をもたらすと考えられている。
 一方、神直毘神、大直毘神は
直前の八十禍津日神、大禍津日神の穢れを正そうとして生まれたとされ、
その名の"直"はよくないことを正すことを意味するという。

 そしてこの神々の直後に伊豆能売神が生まれる。
 伊豆能売神も祓い清めることに属する神とされ、
その名について本居 宣長は"明津"が縮まって"イヅ"になったとする。
 一方、神名考では"イ"は齋のイのように清いことを表すといい、
他にも"イツ"を厳と解し、清めることを意味するとする説などがあり、
その名義については定まっていないところも見受けられる。
 しかしながら、その何れの解釈についても
この神が浄化、清めに属し、それを司る神格であるとする点では
一致しているようである。
 ここからも、この神が浄化、清めに属する神であるということが窺える。
 ところでその事蹟についてであるが、
この神はこの神話のみの登場のようで、残念ながらその事蹟は不詳である。
(なお、典拠は不詳ながら『日本神名辞典』や『諸神・神名祭神辞典』には
この神を速秋津日子神、速秋津比売神と同神としている。
一方、大禍津日神は瀬織津姫神と同神とされることもあり、
祓戸四柱大神の中の二柱と同一視される神がここで登場していることになる。)

 最後に余談だが、『先代旧事本紀』には伊邪那岐命の禊の場面にて
 「復其禍直為、而成所神三柱
  神名神直日神
  次大直日神
  次伊立能売神」
と記されているが、この"伊立能売神"も伊豆能売神のことであろうか。

― 参考文献 ―

  • 『古事記 日本思想大系1』 青木 和夫/石母田(いしもだ) 正/小林 芳規/佐伯 有清
           株式会社岩波書店 1982
  • 『続日本古典全集 先代旧事本紀 附旧事本紀直日』
         石井 恭二編集発行人 株式会社現代思想社 S.55
  • 『日本神祇由来事典』 川口 謙二編集 柏書房株式会社 1993
  • 『日本神名辞典』 神社新報社 H.7第二版
  • 『諸神・神名祭神辞典』 矢部 善三/千葉 琢磨編著 株式会社展望社 1991
  • 『「日本の神様」がよくわかる本』 戸部 民史著 PHP研究所 2004
  • 『面白いほどよくわかる 日本の神様』 山折 哲雄監修 田中 治郎著
              株式会社日本文芸社 H.19
  • 『すぐわかる 日本の神々 聖地・神像・祭りで読み解く』
              鎌田 東二監修 株式会社東京美術 2005