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魔廃「ディープエコロジカルボム」雑考

始めに、「ディープ・エコロジー(Deep Ecology)」とは、スウェーデンの哲学者、アルネ・ネスが1973年に自身の論文で提唱した造語・思想である[1][2][3]。

 ネスは論文の中で「シャロー・エコロジー(浅いエコロジー)」と「ディープ・エコロジー(深いエコロジー)」を区別した。前者は汚染・資源枯渇に反対する反対するようなエコロジーで、主たる目標は先進国の繁栄であり、人間の健康や生存の保証が前提であるような考え方とされる[1][3]。一方で、ネスは後者に対していくつかの点を挙げて特徴づけを行っている。
 例えば、生命体や人間は個々でばらばらな存在ではなく、互いに関連しあうものであるという考え方を挙げたり、ディープ・エコロジーでは原則として全ての生命体は「生を送り開花する平等の権利」を持つとする(ただし、これは「原則として」であって、人間が生きていくための、他の生物の若干の殺戮などは認めている)。この他には、反階級的な姿勢を取ることや地域的自立・分権化を支持するといった社会構造に対する言及も見える[1]。その中でも、「自己」が広まり深まっていくことで得られる「(拡大)自己実現」という考え方は主要な概念の一つとして考えられる[1][3]。

 このネスの思想・概念を、ネスの直径であるデヴァルとセッションが体系化し、『ディープ・エコロジー』という書を著した。しかし、その主張するところには社会的側面を軽視する傾向が強く、批判が集中することも招いた。

 この思想・概念の名前を冠したスペルカードが、魔廃「ディープエコロジカルボム」(Deep Ecological Bomb / ディープ・エコロジーの爆弾)である。
 魔廃は同系のスキルカード、マジカル産廃再利用ボムの名前から、つまり、マジカル→Magical("魔"法の)+産"廃"(産業廃棄物)の二文字からの名前と考えられる。

 演出としては、何かの瓶を投げ付けると、その瓶が一定時間後に大爆発を起こすというものである。また、魔理沙自身が爆風に巻き込まれると、自らの攻撃であるにも関わらずダメージを受けるという点も特徴的である。
 この点に着目すると、シャロー・エコロジーに対して生命体や自然と人間の立場を平等に見る向きが強いことから、自分も相手も同様にダメージを受ける、ということで思想を体現したものであろうか。あるいは、 ディープエコロジーが社会や人間の価値を過小評価するような方向の考えに結び付きやすいことから、主体である人間の優位性を排除することの現われとして自分もダメージを受ける、という形になったのか。
 スペルカードを行使するのが魔理沙、つまり人間であることも併せて考えると、何らかの形でディープ・エコロジーの考えを表しているように思える。

― 出典 ―

  • 『東方非想天則 ~ 超弩級ギニョルの謎を追え』(上海アリス幻樂団/黄昏フロンティア製作 2009)

― 参考文献 ―

  • [1]『エコロジーと人権』(村田 恭雄著、株式会社明石書店、1998)
  • [2]『地球環境の事典』(宇井 純/根本 順吉/山田 国広監修、株式会社三省堂、1992)
  • [3]Wikipedia(ディープエコロジー) http://ja.wikipedia.org/wiki/ディープエコロジー